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どこでもプリント全更改プロジェクト

年間5000万円のコスト削減に成功した「どこでもプリント全更改プロジェクト」。その知られざる裏側

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年間5000万円のコスト削減に成功した「どこでもプリント全更改プロジェクト」。その知られざる裏側

どの企業のオフィスにも、必ずと言っていいほど設置されている複合機。新機体への入れ替え時期は同じくどの企業にも訪れ、もはやありふれた光景だ。しかし、KADOKAWA Connected(以下、略称KDX)とKADOKAWA総務を中心としたチームは、一見地味な印象を抱きがちな複合機の更改プロジェクトを通して大きな価値を生み出した。中でも、Customer Success部の渡辺基子とEUCサービス2課の小林馨は、KDXのメンバーとして尽力したキーマン。プロジェクトを成功に導いた2人に、その裏側を聞いた。

緻密なペルソナ分析

—まず「どこでもプリント全更改プロジェクト」がスタートした経緯を教えてください。

渡辺:

以前からKADOKAWAグループには、専用ドライバーをPCにインストールすれば社内のどの複合機からでも出力できる「どこでもプリント」という仕組みが導入されていました。そんな社内で利用していた100台超の複合機が契約更新のタイミングを迎えるにあたって、スタートしたのがこのプロジェクトです。

簡単に言ってしまえば、複合機の入れ替えを実施したという話なんですが、実は出版社でそれを実現するのはかなりハードルが高いんです。そもそも、長らく“紙と鉛筆”を使って”物理的な本”を作ることを生業としてきた出版社にとって、原稿などのデジタルデータを出力する複合機は大事なツール。その利用頻度は他の業種の比ではありません。新機体が現場の求める性能ではなかったり、入れ替え作業がうまくいかなかったりすると、会社に大きな損害が与えてしまう可能性だってある。そういう意味では、かなりの緻密さが求められるプロジェクトでした。

—では、相当苦労されたのではないでしょうか?

渡辺:

このプロジェクトにおける私の役割はプロジェクトマネージャで、複合機の主管であるKADOKAWA総務と小林さん含む技術チームの間を取り持ちながら、大きな指針や各種調整などを行っていました。

その中でも頭を使ったのは、プロジェクトの初期に実施したペルソナ分析ですね。KADOKAWAグループは様々な種類の本を出している出版事業があり、なおかつそれ以外の事業も幅広く展開しているエンターテインメント企業です。編集者だけでなく、アニメを作る人もいれば、ゲームを作る人もいる。さらにそういったものづくりをサポートする販管部門で働く人たちもいます。

つまり、同じ社内でも複合機のユースケースが全く異なっていて、その数も膨大。これを抜け漏れがないように整理するのが、とにかく大変でした。結局、このペルソナ分析に基づいて新機体に必要な機能の絞り込みや担保すべき印刷品質レベルを検討の上、サービスの設計をしていきます。ここがしっかり抑えられていないと、更改後の従業員満足度が低くなってしまうんです。

いかにダウンタイムを発生させないかが肝

— 一方で、技術的な面での苦労はありましたか?

小林:

私はEUCサービス2課という、世間一般で言うところの情報システムの人間です。プロジェクト時は主に技術面の支援を行っていたのですが、新機体に入れ替える際にダウンタイムをいかになくすかという部分はなかなか苦労した覚えがあります。

そもそも、どこでもプリントという仕組みは同じプリンタードライバで複合機の場所を意識せず利用できるように多種多様なシステムと密につながっています。

利用者が印刷ジョブをスプールサーバに送信、複合機側で社員証をかざす事で認証基盤と連携し認証、スプールサーバから印刷ジョブを取り出して印刷という流れです。

この他にも、認証基盤はユーザ情報を取得するため、ActiveDirectoryとも連携したり、スキャンしたデータをメールで送信したり、Googleドライブへ保存したりしています。

業務に支障をきたすようなことはあってはならず、新機体の入れ替え時にはこういった基盤やサーバーの連携トラブルは避けなければいけません。システムの冗長化は当然ですが、どういった仕組みだったらトラブルの可能性を低くできるかについてはいろいろと検討しました。

渡辺:

最終的にはどのような形で進行しましたっけ?

小林:

既存のシステムと共存が可能な仕掛けでしたので旧機体はそのまま運用し、順次新機体に入れ替えていきました。様々なパターンを考えた結果、確かこれが一番の安牌だという結論になったはずです。それに万が一トラブルが発生した場合に備えて、しばらくは旧機体も残していましたね。

渡辺:

そうですね。入れ替え時の段取りもかなり慎重に考えました。どのフロアから始めるべきなのか。一台ごと、1フロアごとの作業の流れはどうするのが一番効率的なのか。作業の流れを構成する各ステップにはどのくらい時間がかかるのか……。業務の継続性を考慮した上で、事前に綿密な計画を立てています。こうした段取りをメインで考えるのは私でしたが、技術側の深い知見も必要です。小林さんを始めとする技術チームにもかなり考えてもらいました。

—出版社の複合機入れ替えってそこまで徹底的にやるものなんですね……。

渡辺:

複合機が止まると、本が予定通りに出版できないリスクにつながりますからね。もちろん、こういった入念な準備をしていたとしても、「複合機を入れ替えます」とアナウンスするだけでは現場からの理解は得られません。今回のプロジェクトが実現すると生まれるメリット、業務に支障が出ないよう入れ替えができる根拠など、顧客志向で使う側の目線に立って、それぞれ現場が不安に感じている部分を丁寧に説明して回ったりもしています。

▲社内周知用のオリジナル漫画(漫画協力:かんべみのり)

特に新機体の性能は現場としては気になるところです。だから、先ほどのペルソナ分析で機体を絞り込むだけではなく、各編集部に導入候補の複合機の出力品質もチェックしてもらっています。テスト機で原稿データを何度も印刷してもらって、実際に業務できちんと耐えうるものかを確認してもらいました。

年間約5000万円のコスト削減に成功

—かなりの労力を注ぎ込んでようやく実現したプロジェクトだと思うのですが、どういったところにやりがいを感じましたか?

小林:

このプロジェクトはスムーズに新機体へと入れ替えるだけでなく、どこでもプリントの仕組み自体をアップデートするという目的もありました。実際、今回は新たな機能を実装することで利便性を強化している。エンジニアとして、そこはやりがいを持って取り組むことができたと思います。

—具体的にはどのような点が変わったんですか?

小林:

大きな変化の一つが、認証登録の統一です。複合機を使う際に社員証をかざすというアクションはKADOKAWA・ドワンゴで共通していたのですが、KADOKAWAとドワンゴではその認証の登録方法が異なっていました。複合機や社員証を管理する総務や人事と利用する従業員に無駄な負担が生じている状況だったんです。

KADOKAWAで働く人が複合機を利用し始めるには、総務や人事からカードの認証情報を情報システムに連携してもらい、それを認証基盤に手動で登録をする必要がありました。一方で、ドワンゴで採用していたのは従業員が複合機の機能を使って自ら認証登録をする仕組み。この方法で統一してしまえば、総務・人事・情報システムの業務効率化につながる。今回のプロジェクトでは、このドワンゴ方式をKADOKAWA本社にも採用することにしました。

また、ゲスト印刷の機能も新たに実装しています。これまではそういった機能がなかったために、社外の方は従業員を通して複合機を利用するしかありませんでした。しかし、これも塵も積もれば山となるで、業務の無駄につながっていく。そのため、社外の方でも社員証による認証はなしに各オフィスの複合機を使うことができるように仕組みを変更しています。

—渡辺さんはやりがいの点ではどうでしたか?

渡辺:

私は、"野良の複合機”を一掃できたのが快感でした。

—"野良の複合機”とは何ですか?(笑)

渡辺:

どの部署も管理していない複合機のことを勝手にそう呼んでいます。実は、以前からそういった複合機が社内にはたくさんあって、オフィス再編で引っ越す際に管理者を探す手間がとてもかかっていたんです。私はそれにモヤモヤを感じていて。

だから今回のプロジェクトでは、それを撲滅する、という野望を密かに持っていたんです。今回きちんと管理する体制を整えたことでそれを実現できましたし、しかも無駄な複合機がなくなったこともあり、年間5000万円弱のコスト削減に成功することができました。

総務からの嬉しい言葉

—すごいですね。大きなトラブルはなかったんですか?

渡辺:

それが、ほぼなかったんです。

小林:

大規模プロジェクトの割にはすんなり終わってくれましたね。

渡辺:

ただ一番の成果は、KADOKAWA総務からの言葉です。このプロジェクトは2021年の11月から検討が始まって、入れ替え自体は2022年の10月ごろに終えています。その際、二人三脚で推し進めてきた総務の方から、「技術的な問題点について、ITリテラシーが高くない総務では、今まで遠慮もあってこちらでどこの部分が理解できないのかをうまく伝えられず、結果としてトラブルになる事が多かったが、今回は根気よく不明な部分を一緒になって解決して頂きとてもありがたかった」と言ってもらえました。

どこの企業でも大なり小なりだと思いますが、技術に精通していない総務は「情報システムが何を言っているかわからない」と不安を感じている一方で、情報システムは「総務はシステム上の制約をわかってくれない」と不満を抱いていたりする。お互いに壁があるというんでしょうか。

そうした非IT部門とIT部門の橋渡しをすることも、私の重要なミッションです。そういう意味では、お互いの理解が深くなるように対話の機会を積極的に設けたことはプロジェクト成功に寄与しているのかな、と思います。

小林:

メンバーがやるべきことを明確にして、役割の上下がないフラットなチーム構成にしたのも大きいですよね。KDXが大切にするバリュー(KADOKAWA Connected Standard)のひとつである「相手を理解する」をまさに実現できたプロジェクトと言いますか。

渡辺:

本当にそうですね。とは言え、プロジェクトマネージャがどれだけ声をかけてもメンバーが意識的に歩み寄らないと組織の壁はなくなりません。小林さんを始めとする技術チームや総務の方々が対話の努力を重ね、お互いに一歩踏み込んでプロジェクトを進めてくれたからこそ、気持ちよくプロジェクトを終えられたのかなと思っています。

—最後に、KDXにはどういう人が向いていますか?

小林:

まず会社自体は、ワークライフバランスが整っていてかなり働きやすいと思います。それに裁量を与えてくれるので、自分がやりたいことは自由度高くやらせてもらえる。だからこそ受身ではなく自分から課題を設定する、能動的な人が活躍できるんじゃないでしょうか。自ら課題を設定してドライブしていける渡辺さんみたいな人だと思います(笑)。

渡辺:

"野良の複合機”を一掃するぞ、と楽しんでいましたからね(笑)。でも本当に小林さんの言うとおりで、自ら積極的に動けばチャンスを得やすい会社なのは間違いありません。その分、実力主義ではありますが、こうした風土が合う人はKDXでも活躍できると思います。

TEXT:橋本 歩

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PROFILE

Customer Success部
渡辺 基子
外資系ITベンダーでシステムエンジニア、プリセールスエンジニア、ビジネス開発に従事し、2019年KADOKAWA Connectedへ中途入社。Customer Success部に所属し、働き方改革に纏わる技術領域のプリセールス・ビジネス開発を担当。システムやツールの導入支援を行うかたわら、KADOKAWAのコミュニケーション・業務改善活動や、ユーザー視点で事業を変革する組織作りを推進している。

EUC & Cyber Security部 EUCサービス2課
小林 馨
半導体製造会社の製造技術、独立系VoDサービス会社のサービスおよび社内インフラに従事し、2010年ドワンゴへ中途入社。 情報システム部に所属し社内インフラを担当、2020年にKADOKAWA Connectedへ転籍。 コミュニケーション・コラボレーションツールの導入や利用促進を担当。

※所属部署・役職名等の情報は2024年1月時点のものです

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